3回にわたってお届けしてきた今井麻美のインタビュー特集。
最終回となる今週は、声優人生でのターニングポイントや、デビュー当時の話など、「こえぱ」でしか読めないディープなインタビューを、2ページにわたる大ボリュームでお届けします。
今井麻美(いまい あさみ)
EARLY WING所属。
声優になってよかったと思うことは何ですか?
私がその人を知らないのに、相手が私を知ってくれてるってすごいことだなって思います。
自分がこの世界以外で生きていたら、そんなに世界って広がってないんじゃないかと思うんです。
自分が普段出会う家族だったり、友達だったり、職場の人だったり、くらいで。
特に自分は世界が広がりにくい性格だったのに、この仕事に就くことによって、私が知らなくても、私のことをすごく知ってくれてる人が世界中にたくさんいるっていう、そこが本当に不思議で、未だに慣れなくて。
「えっ、なんで私のこと知ってるんですか?」って聞いたら、
「この作品が好きなんです」とか言ってくれると、この仕事に就いていなかったら感じられないことを経験させてもらって、すごい人生を歩んでるなぁって思います。

声優人生のターニングポイントになった作品や役はありますか?
2011年って、私にとってすっごい人生のターニングポイントで、私に大きく影響を与えてくれた『THE IDOLM@STER』と『STEINS;GATE』がどちらもアニメ化された年なんです。
そういうのって重なるんだ、ってすごくアワアワしたのをよく覚えてます(笑)。
どちらも元々ゲームで、自分がやらせていただけることになってすごく嬉しくて。
どうやったらキャラクターを魅力的に演じきれるんだろうかってことを、すごく練れる作品でもありましたし。
私自身がその2つの作品のファンだから、みんなに知ってほしいと思っていた作品が、誰でも見ることができる地上波のアニメになるって、やっぱすごくインパクトのあることで。
今でこそ多様性の時代ですが、当時はアニメになっていろんなものを宣伝することによって、またそれが還元されて、っていうのが主流の時代だったから、ある種の1つの到達点だったように感じていました。
そこからまたその作品の続編が制作されたりっていうきっかけになる、
「ここまで来たなー」っていうのが感じられた作品がこの2つだったなって思います。

同じ年に東日本大震災があって。
あのとき私、とあるゲームの収録に行ってて、スタジオに早く着いてしまったから、近くでお茶をしてたんですよね。
のんびりしてたらすごく揺れて、どうしていいか分かんなくなってスタジオに行って、テレビで状況を見たときに、本当に虚無感に襲われたというか。
どうしたらいいのか分からなくて呆然としていました。
その2年ぐらい前からアーティスト活動をやらせていただいていたんですけど、その頃はまだ声優としてまだ全然名をあげてもいないのに、音楽活動をやっていいのだろうかっていう葛藤がすごく強くて。
でもライブとかをやらせていただくと、多くの方が見に来てくださるのがすごく嬉しいっていう、そのギャップがなかなか自分の中で整理のつかない2年間を過ごしていたんです。
そうしてるうちに震災があって、そのときに私のことを知ってくれている人が、どこかで今大変な思いをしてるかもしれない、って思って。
ひょっとしたら私がライブをやります! とか、何か活動してます! っていうのが、その日々の生活の励みになる可能性があるのかなって思って、初めて前向きになれました。
他人の感情を知って初めて自分に自信が持てたので、今の自分があるのは、そんないろんな人たちの感情の寄せ集めみたいなところはすごくあります。
そういうことに、じわじわと気付いていけるきっかけがその年だったのかなって。
作品というよりかは、その年がすごくターニングポイントになったかもしれないです。